IWC MARK 11  SOLD

 
 
 
 
イギリス軍用のパイロットウォッチとして製造された「MARK11」は「MARK10」から仕様が変更されて帯磁構造のパイロットウォッチとして誕生しました。センターセコンドに仕様が変更され視認性の高いデザインに加え、時刻合わせで秒針が止まるハック機能が追加されています。
ここでは希少なMARK11のオーバーホールを行いながら、機械の特徴と修理技術をご紹介します。

搭載ムーブメントCal.89は、IWCの手巻きムーブメントとして1946年に登場し、70年代まで長きに渡り製造されました。
シャトン留めのルビーやコートドジュネーブなど、オールドスタイルの美しい仕上げの機械は、パーツ一つ一つが厚く、立体的な輪列配置が見どころです。
 
 
 
 
 
  
Cal.89 (Mark 11) 
マーク11では、機械も特別仕様で、ハック機能(秒停止機能)を備えており、イギリス軍官給品の証である↑(ブロードアロー)が機械に刻印されています。
 
Cal.89 (Ordinary)


リューズの操作でハックレバーが動きます。 
 
 
内部では、巻芯の動きから連動してハックレバーが動きます。
後の自動巻ムーブメントの8541Bと基本構造は同じですので、
89のハック機能はIWCのプロトタイプと言えます。
どちらの機械もAlbert Pellaton氏の設計です。
小スペースでテンプへの干渉力を調整できる画期的な仕組みです。
参考に、他のメーカーも掲載します。

 

  

Valjoux Cal.230
名機として多くのメーカーに採用されたクロノグラフムーブメント。
23にフライバックを搭載した機械です。ツヅミ車の動きを利用します。

 

 

ETACal.7750
現行の王道クロノグラフムーブメント。
板状のバネをスライドさせて押さえます。
それぞれ個性的なハックレバーが考案されていますが、
IWCの巻芯の先端を利用するタイプは数が少なく独特です。
さて、メンテナンスを続けましょう。 
 

洗浄機で洗っていきます。 

 
 





 
Beat Error 調整  
組み上げ後、測定器での計測線が2本に分かれています。
テンプの位置が中心からズレる、「ビートエラー」が起きています。
0.5ms以内を目標に調整します。現行品とは違う調整方法を用います。 


 
自作の専用台でテンプを支えながら作業します。
ちなみに初期型のMARK11は、耐震装置が付いていません。 
  
 
 中心部分の溝に工具を差し込んで固定し、少しだけテンワを回します。


 
完全に調整すると1本の線になりますが、姿勢を変えると、多少変化します。 

 
 
中枠だけでなく文字盤も厚い、帯磁仕様です。  
 
 
押しすぎないよう、ストッパーのついた大型の剣付け台で針を付けていきます。  







 
 
 
メンテナンス完了です。
Power reserve 48hour
Rate test +10sec/day
Dial up     323 deg  +6sec/day
Dial down   330 deg +11sec/day
Crown down  284 deg +8sec/day